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『ダイバーズ!』 第二十五章 【暴力と血と】

西原が床に額をこすりつけた。

「すまなかった! 本当にすまなかった! 今までの分は必ず返す。だから許してくれ」 木崎は、もう一度、西原の頭を床に踏みつけると、西原の頭から足をおろした。 「鷲尾も、この年末時期に本部長の更迭なんて、目立つ人事はやらんだろ。おまえが更迭される…

そうね。まだいいかもしれないわね

「家庭持ちの頭をスカッとぶっ飛ばしてやれ」 「そうしましょうか。じゃ、とりあえず、この場はこれでお開きよ。みんな、気を付けて帰るように。沢田は、わたしと一緒に来て」 女上司とふたり、飲み食い以外のリアルさ、沢田の中で何度消そうとしても、煩悩…

おまえが驚いたのは、実世界でしか体験できないことがある、と信じていたことが壊れたせいよ

問われたことの答えが少し見えたような気がした。だが、答えは毛布にでもくるまれているかのように、まだはっきりした形が見えない。 「よくわかりませんね。別に壊れたとは思ってませんけど」 「それは、おまえがまだ気づいてないからよ。おまえも夢を見る…

はるか年下の黒木冴子を相手に、感情を抑えるのが精いっぱいだった。

「それって、おかしくない? ずっと単身赴任してる人だっているのよ。奥さんとも、子供とも会えない生活。外国に単身赴任してる人なんか、時差のせいで通信でのつながりも取れない人が多い。奥さんと、子供がいることなんて、おまえが現実の世界に帰らなきゃ…

代々木パークヒルズへ

木崎が後部座席へ滑り込むとタクシーが走り出した。 「高速使いますか?」 「いや、下道でいい」 急いで帰ったところで迎える者は誰もいない。明かりのない冷たい部屋が待っているだけだ。 窓の外を夜の街が流れていく。上着のポケットから携帯端末を取り出…

タウンからの帰りは味気ないものだった

黒木冴子が別れを告げると、姿が薄くなって消えていった。黒木冴子が消えると、バイクもベンチも消え去り、急に腰の置き場を失った沢田はコンクリートの堤防の上で尻もちをついた。現実に放り出されたような気がした。沢田は胸から携帯端末を取り出し、ダイ…

硬直していた気持ちが少しだけ楽になった

三メートルほどまで近づいたところで、ようやくナンバープレートが見えた。頭の中に刻み込む。目的は達成した。あとは、この場を通り過ぎるだけだ。奥歯を噛みしめてセダンの横を通り過ぎた。なにも動きがないことを祈りながら、セダンの方へ耳と背中の神経…

マンションのローンを抱えて、

留美が望むような受験環境を整える資金は無かった。 「週末になれば、また寝てるだけじゃない。わたしだって、切り詰められるところは切り詰めてるのよ。ずっと先延ばしにされてるけど、塾の入学テストの前に家庭教師で勉強を始めさせないと、もう間に合わな…